しかし、復讐が始まる後半部分は、おもしろいことはおもしろいものの、内容がやや軽く感じられ、若干期待はずれでした。前半の破滅に至った原因が後半に書かれておりそれが後半の主題となるべきであるのに、その主題よりも、謎の復讐者を見破るほうに関心が向いてしまうためです。そのため、読後直後には、後半部分が2流の推理小説のように感じました。復讐の描写はほどほどにして、なぜ会社に捨てられたかを前面に出して書かれていれば、読後の満足度も違ったと思われます。(ただし、残念に思うと同時に、読み手の力量のなさも反省しました)
巻末の解説で、経済評論家の中沢孝夫氏は、
「もっともそうした幸運に出会うためには資格と条件が必要だ。人は自分の実力以上の人間とは出会えないものである。その実力は自分で努力して身につけることができるが、多くは先輩や周辺からどれだけ学べるかによって育ってくる。主人公の武田はそのような意味において出会うことを学ぶことの達人だ(高い授業料をはらっているが)。」といっている。
始めは我が為に、やがて社会公共の為に、という言葉も上司から送られ、主人公がいつも励みにした言葉だ。これについても起業家精神そのものと中沢氏は解説している。
勤め人であっても出会いを学び出会いを活かすことが大事だと実感。 実名だから赦されるが何かと苦労が絶えないようでありながら、会社はトントンと大きくなり、ヒステリーな嫁から美人で気立てのいい女性へアップグレードし、子供からは慕われ....、これが実名でなければ熱血版植木等だよ。
この作品の中で扱われている「シンジケート団」についてはつい先日、作中の出来事と同じ出来事がニュースに流れました。これを慧眼とまでは言いませんが、この小説を読む前と後ではニュース自体のインパクトや意味に対して、受け取り方が大分違っていると思いました。
そういう意味で、読んだ後にも残る本でした。お勧め。 引き込まれた その存在は誰もが知っているが、実態となるとあまりよく知らない日本国債の発行という意表をついたテーマ設定。登場人物や交わされる会話、場面設定も大変よく考えられており引き込まれた。
小説としても成功しているうえ、日本国の財政事情がいまや火の車の自転車操業状態である事、そのことに対して抜本的な対策も講じず思考停止状態で問題を先送りしている政府や金融当局の無責任ぶり。さらには、そんなシステムも意外と危うい合意の上に成り立ているものであることなど、本当に考えさせられるものであった。
拍手喝采の1冊でした。 国債のトレーディングをイメージするには最適の書トレーダーに抜擢されたヒロインを中心に、国際暴落をめぐるサラリーマン反抗記かと思いきや、その裏では政治権力の影もちらほら。というわけで、話の筋は大人向けの少女漫画チックなキャラクターとストーリーで好き嫌いが分かれるところでしょう。しかし、国債という地味なモチーフ選択と実際のディーリングの現場の描写などは、国債について関心を持って学ぼうとする方の入門書としては最適だと思います。